「この子に、幸せになってほしい。」
「この子の笑顔が見たい。」
そう思ったことから始まった、一人の女の子の物語があります。
今からお話しするのは、私が長年ピアノを教えてきた中でも、特に心に残っている生徒さんのお話です。
小学1年生の冬、一人の女の子がやってきました
その女の子は、それまで大手のピアノ教室でピアノを習っていました。
なんと、3年間。
ところが、私が初めて会ったとき
楽譜を見ても、
「ド」がどこにあるのかわからない。
音符を見ても、何の音なのかわかりません。
3年間ピアノを習っていたのに……。
きっと、ご本人も、お母さまも、
「どうしてできないんだろう?」
「うちの子はピアノが苦手なのかな?」
そんなふうに思っていたのかもしれません。
でも、私は違いました。
その子を見て、
「この子には、まだ出ていない力がある。」
そう感じたのです。
でも、すぐにはレッスンを始められませんでした
当時、私の教室にはレッスンの空きがありませんでした。
「今は、空きがないので申し訳ありません」
そうお伝えしました。
すると、その女の子は泣いてしまいました。
私は、その姿を見て胸が痛くなりました。
そして思ったのです。
「この子に幸せになってほしい。」
「この子の笑顔が見たい。」
4ヶ月後お引っ越しする生徒が出て、レッスンを始めることになりました。
そして、レッスンが始まりました
そこからの成長は、本当に驚くものでした。
音符を一つずつ覚え、
楽譜を読むことができるようになり、
リズムを理解し、
音を聴き、
自分で考えて弾く。
一つできるようになると、また次ができる。
そして、その次も―。
まるで、
乾いたスポンジが水を吸い込むように。
どんどん、どんどん吸収していきました。
私は何度も思いました。
「この子、こんなにできるんだ……。」
それまで見えていなかった能力が、次々と表に出てきたのです。
子どもは「できない」のではなく、「できる方法」に出会っていないだけかもしれない
ピアノを教えていると、時々こんな場面に出会います。
一生懸命練習している。
毎週、きちんとレッスンにも通っている。
それなのに、楽譜が読めない。
一人で弾けない。
なかなか上達しない。
そんなとき、保護者の方も、子ども自身も、
「この子は才能がないのかな?」
と思ってしまうことがあります。
でも、本当にそうでしょうか?
私は、そうは思いません。
もちろん、一人ひとり得意不得意はあります。
成長のスピードも違います。
だからこそ、
「この子には、どんな教え方が合っているのか」
を考えることが、指導者の大切な仕事だと思っています。
中学2年生になった彼女が選んだ曲
そして、月日は流れました。
小学1年生だった女の子は、中学2年生になりました。
そして、ピアノ発表会で彼女が弾くことになった曲は――
ショパン「英雄ポロネーズ」
でした。
あの、
「ド」がわからなかった女の子が。
大きな舞台で、
ショパンの「英雄ポロネーズ」を弾く。
その姿を見たとき、
私は胸がいっぱいになりました。
「この子に出会えてよかった。」
「ピアノを続けてくれてよかった。」
そして何より、
人は、こんなにも変わることができるんだ。
そう思いました。
教室生徒は100%、中学になってもレッスンを継続しています。
中学の合唱コンクールでのピアノ伴奏
同じクラスに伴奏希望者が複数人いた場合、オーディションになります。
約1週間の間に練習して
音楽の先生など数人の先生の前で合唱曲を弾いて一番良かった生徒さんが
伴奏者に選ばれます。
オーディションで勝つために必要な演奏指導をします。
もちろんメンタル的にも
負けないところまで持って行きます。
この子も
3年間全て、最優秀賞&伴奏者賞をいただくことができました。
学校という場所で、たくさんの人の前に立ち、
自信を持ってピアノを弾く。
小学1年生の冬、泣いていた女の子からは想像もできない姿でした。
でも、私は「奇跡」だとは思っていません。
そこには、
その子自身の努力があり、
そして、
その子の力を引き出すための指導があったからです。
私がレッスンで大切にしていること
では、なぜこの子は変わったのでしょうか?
私の教室では、一般的なピアノレッスンとは少し違うことを大切にしています。
例えば――
楽譜に「ド・レ・ミ」を書きません
音符の下に「ド」「レ」「ミ」と書いて、それを読むのではなく、
音符そのものを見て、音がわかる力
を育てます。
先生が先にドレミを歌って教えません
先生の後について歌えば弾ける、という状態ではなく、
自分で楽譜を見て、自分で音を判断する力
を育てます。
鍵盤を見ることに頼らない
「鍵盤を見ながら弾く」という習慣がついてしまうと、楽譜から目が離れてしまいます。
私は、
楽譜を見て、音を読み、手の感覚を使って弾く
という力を大切にしています。
もちろん、これだけではありません(笑)
長年、たくさんの子どもたちを指導してきました。
その中で、
「どうしたら、この子はもっと伸びるのか?」
「どこでつまずいているのか?」
「何を変えれば、この子の力が出てくるのか?」
一人ひとりを見ながら、試行錯誤を繰り返してきました。
だから、私の指導には、
長年の経験の中で積み重ねてきた、
私だけの工夫があります。
そして……
ここから先は、業務上の秘密です(笑)**
「この子はできない」と決めつけないでほしい
ピアノがなかなか上達しない。
楽譜が読めない。
練習しても、なかなか弾けるようにならない。
そんなとき、
「うちの子には才能がないのかな。」
「ピアノは向いていないのかな。」
と、どうかすぐに決めつけないでください。
子ども自身も、保護者の方も、
今の指導方法がその子に合っているかどうかは、なかなかわかりません。
先生から教えられた通りにやっている。
毎週レッスンにも通っている。
だからこそ、
「この方法でいいのかな?」
と疑問を持つことさえ難しいのです。
指導者の仕事は「曲を教えること」だけではありません
私は、ピアノの先生の仕事は、
ただ楽譜に書いてある音を教えたり、
曲を最後まで弾けるようにしたりすることだけではないと思っています。
子どもをよく見て、
その子のつまずきを見つけ、
その子に合った方法を考え、
「できた!」
という経験を積ませてあげる。
そして、
「私にもできる!」
という自信につなげていく。
それが、指導者の大切な仕事だと思っています。
子どもの可能性は、最初から見えているとは限らない。
だからこそ、
「できない」と決めつけない。
「才能がない」と決めつけない。
その子の中にある力を見つけてあげる。
そして、
その力が花開く場所を作ってあげる。
ピアノを通して、子どもの未来を明るくしたい
私が目指しているのは、
「発表会で上手に弾ける子」を作ることだけではありません。
ピアノを通して、
自分で考える力。
楽譜を読む力。
音楽を楽しむ力。
最後まで諦めない力。
そして、
「私にもできる」という自信。
それを、子どもたちに育ててあげたいと思っています。
「あのとき、いまさかピアノ教室に来てよかった。」
いつか、そう思ってもらえたら、
それが私にとって一番嬉しいことです。
もし今、お子さまのことで悩んでいるなら
「ピアノを習っているけれど、なかなか上達しない。」
「音符が読めるようにならない。」
「うちの子はピアノに向いていないのかもしれない。」
そんなふうに感じていらっしゃる方へ。
もしかすると必要なのは、
もっと頑張らせることではなく、
その子に合った「学び方」に出会うこと
なのかもしれません。
子どもの未来は、
小さな一歩から変わることがあります。
私はこれからも、
一人ひとりの子どもの中にある、
まだ見えていない可能性を探していきたいと思っています。
そして、
ピアノを通して、子どもたちの未来が明るくなるように。
それが、
私が長年ピアノを教え続けている理由です。
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